2010/06/01(火)長野県 天竜川 ~チガヤマット設置によるオオキンケイギクの防除の試み~

[2011/5/21]
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施工後1年が経過したチガヤ群落の様子.
 
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施工後2年が経過したチガヤ群落の様子.
穂が風になびいている.
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法肩の歩道との境目に生育する
オオキンケイギク.
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侵入雑草のナヨクサフジ.
 
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昨年に比べて生育範囲を広げているように
見えるイタドリ.


天竜川にチガヤマットを施工してはや一年。その後の状況を観察しました。かつてはこの時期オオキンケイギクだらけ堤防であったこの場所も、すっかりチガヤ群落になっています。一年早く施工した場所は出穂しており、穂が風になびく姿がきれいです。
しかし、法肩の歩道との境目にはオオキンケイギクが生育しています。乾燥気味でも少しの隙間があれば入り込む、驚異の生命力です。一年後の春時点ではのり面全体的に、二株程度のオオキンケイギクが入り込んでいた様です。一昨年の堤防を思うとまずまずの成績だと思われます。

ナヨクサフジなども侵入雑草として入っていますが、特に悪さをする植物ではありません。気になるのが、イタドリです。これは元々の基盤に根茎が残っていました。工事時期の早い段階から隆起して生育していましたが、その範囲を広げているように見えます。しかしながらチガヤはイタドリの隙間から葉を伸ばして展開しています。

来年の春には全体的に穂がついて、本格的なチガヤ堤防となると思います。

[2011/05/21] 水沼



[2010/6/23]
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チガヤの成育状況.
 
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チガヤの生育状況.梅雨になると植物が
一気に成長します.
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堤外地(川が流れている側)では
オオキンケイギクが満開でした.


チガヤマットは比較的良好に成育をはじめました.この場所にチガヤマットを設置したのは2009年12月でしたから,凍害をかなり心配しました.チガヤは天竜川沿いに普通に見られる植物ですから,冬の寒さで枯れることはないでしょうが,設置直後は霜柱などで持ち上げられ,その後乾燥してしまうこともあります.私ごとですが,タマネギの苗の植え付け時期が遅れ(タマネギの苗は冬場に植えますね),植えてみたはいいものの,気がつくとみんな霜柱で持ち上げられて根が浮き上がり全滅.....などという苦い経験をしたことがあります.

天竜川で築堤に用いられている山土は乾燥し易いため植物が定着するにはやや厳しい条件ですが,梅雨にはいり十分な水分が確保できれば設置したチガヤマットも良好に成育することでしょう.
その一方で,堤外地(川が流れている側)ではオオキンケイギクが満開でした.よく観察すると,オオキンケイギクは古い練石積護岸の隙間や攪乱頻度が中程度(かなり抽象的ですが)の礫河原に成育しており,水際や樹林化した場所にはあまり成育していませんでした.そういえば近隣の道路法面にはそれほど多く生育が認められていませんから,天竜川の堤防にオオキンケイギクが多いのは乾燥し易い築堤材料+張芝という構造に関係があるのかもしれません.

[2010/06/23] 木村保夫



[2010/6/1]
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チガヤマットICM-1100

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ICM-1100はロール状に丸めて
運搬されます
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ICM-1100設置状況.軽量であるため
短時間で設置することができます.
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目串による固定.
23本/枚打ち付けます
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ICM-1100設置状況
 
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目土がけを行い完了.目土は
山土+バークとしました.


長野県の天竜川堤防法面においてチガヤマットが約10,000㎡設置されました.
長野件駒ヶ根地区における天竜川の堤防はかなり浸食が進んだ状況で,その対策が急務な課題となっていました.堤防法面は花期ともなると堤防が黄色に染まるほどにオオキンケイギクが多数成育している状況でした.堤防が浸食に至った原因はどうやら次のようなプロセスによるようです(あくまでも仮説ですが).

1. 築堤当初,堤防には全面に張芝工が行われる
2. しばらくすると周囲からオオキンケイギクが堤防法面に侵入定着し芝の上にロゼット状の葉を展開する.
3. オオキンケイギクの葉の下となった芝は被圧され枯れる
4. 除草作業が行われ,オオキンケイギクの葉の下に円形の裸地が生じる
5. 降雨により,裸地から浸食が始まり,時間とともに浸食が拡大する

天竜川の河床材料を用いて築堤された経緯があるとのことで,浸食が進んだ堤防法面には大小の礫が無数に認められる状況でした


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堤防に裸地が多く浸食が問題となっている
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オオキンケイギク.


天竜川の堤防法面にはオオキンケイギクや芝の他,チガヤ群落が形成されている場所がある.よく観察すると,チガヤが群落を形成している範囲ではオオキンケイギクの侵入はほとんどなく,堤防植生が良好に維持されていた.チガヤが生育しているからオオキンケイギクが生えないのか,オオキンケイギクが生えない場所にチガヤが生育しているのかはその時点では明らかではないが,芝の場合とは異なり,チガヤはオオキンケイギクのロゼット上に葉を展開することができるため,除草後にも裸地が生じることはない.

そこで,浸食が進んだ堤防法面を整備しチガヤマットを設置することで,チガヤ群落を創出し堤防の浸食が生じないような安定した植生を形成することとした.まず,オオキンケイギクが多数成育している法面の表土を深さ30cm程度削って除去し,植物の種子がほとんど混入していないと思われる山土を腹付けし,その上にチガヤマットを設置した.チガヤマットの設置は平成21年12月~平成22年5月にかけて行われた.


[2010年6月1日]