2011/04/21(木)兵庫県 猪名川高水敷におけるノシバ・チガヤ緑化 ~河川高水敷の在来種による緑化の取組み~

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 猪名川は兵庫県と大阪府の境界付近を流れる近畿を代表する一級河川の一つです。現在、猪名川の北伊丹地区(左岸)の高水敷ではノシバとチガヤによる緑地整備工事が進んでいます。
常に水が流れている低水路よりも一段高い「高水敷(高水域)」は古くは農耕地として利用される事が多かったようですが、今は沿川住民の憩いの広場として運動公園やゴルフ場として整備されている場所の方が多いのではないでしょうか?高水敷は今も昔も「川と人を結ぶ大切な空間」と言えると思います。
一方で「高水敷」というやや特殊な環境(普段は陸域であるが、洪水時には水に浸かり撹乱を受ける)は、河川生態系において重要な役割を担っているといえす。しかし、残念ながら昨今では高水敷の多くの緑地は外来植物で構成されている場所が多くあります。高水敷は外来植物にとって絶好の生育場所であるという現実が確かにあります。


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施工時の状況.
平成23年1月24日撮影.
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チガヤマット敷設部.
平成23年1月24日撮影.
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チガヤマット裏面の根茎.
平成23年1月24日撮影.


 そんな状況において、伊丹市により、市内の自然草地整備事業の一環として高水敷内の裸地部(グラウンドの一部)でノシバとチガヤによる緑化工事が昨年より実施されました。チガヤ(チガヤマット)は施工対象区全体の10%にも満たない面積でのスタートですが、今後の維持管理の中で時間をかけてチガヤとシバ混生型の低層草地の成立を目指す事としています。


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施工後3ヶ月経過(ノシバ部).
平成23年4月21日撮影.
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チガヤマット施工部.
平成23年4月21日撮影.
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チガヤの新芽.
平成23年4月21日撮影.
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施工後5ヶ月経過(ノシバ部).
平成23年6月13日撮影.
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チガヤマット施工部.
平成23年6月13日撮影.
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施工区全景.
平成23年6月13日撮影.


 6月中旬時点で想定を上回る勢いで早くもセイタカアワダチソウやネズミムギ、オランダミミナグサ等の外来種の姿が目立ってきました。チガヤマット施工部においては4月下旬時点では青々としたノシバに囲まれ、裸地が非常に目立つ状態でしたが、写真の通り6月中旬時点では元気な緑葉を確認する事が出来ました。ノシバ施工区と明らかに異なるのは、チガヤマット施工区では上述の帰化植物の伸長がほとんど見られないという事でした。これはチガヤマットの基盤材であるヤシマットが一定の防草効果を発揮してくれたと考えられます。しかしながらこのまま放置した場合、ノシバはもちろんの事チガヤマット施工区内にも帰化植物達が侵入してくるのは時間の問題・・・という事で、施工当年の7月に第1回目の地上部の全面刈取りを実施する事になりました。


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刈取実施後1ヶ月経過.
平成23年8月1日撮影.
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刈取実施後1ヶ月経過.チガヤマット施工部
平成23年8月1日撮影.
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施工区全景.
平成23年8月1日撮影.


 上の写真は刈取り実施から約1ヶ月後の状況です。ノシバ、チガヤ共に新しい葉茎を再生させ整然とした景観が広がっています。今後も2~3回/年程度の刈取り管理を継続的に実施し、将来的には様々な野草が混生出来る多様性の高い草地、猪名川の高水敷特有に生育していた在来種の観察が出来る貴重な緑地として育ってくれる事を期待したいと思います。


[2011年4月21日]