2006/05/23(火)千葉県 豊岡地区幹線排水路 ~三面張農業排水路の自然再生~

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一般的な三面張の農業廃水路
 
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水田からの排水口
 
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排水口の直下に設置した
ベステックロックロール


 千葉県山武市の豊岡地区では,圃場整備のため幹線排水路が設置されました.幹線排水路はその水田の水を排水するために,かなり深い水路となり,その維持管理を行うためにコンクリート三面張となる場合が多くあります.排水路の維持管理にはかなりの労力がかかりますので,維持管理を低減させるためには三面張水路は一つの方法であるといえます.しかし,その一方で,水辺の生態系を保全する点からは課題が多くあることも否めません.今回の豊岡地区幹線排水路では,水路造成にかかわる行政から,三面張水路で少しでも生態系の保全にかかわる取組みができないかとの問いかけがあり一緒に検討を行いました.
三面張水路での自然再生はなかなか難しい課題ですが,維持管理をできるだけ損なわずにできることを考えてみました.その結果,次のような目標を立てて試験施工を行いました.
① 落下した生物が最下流まで流されないような島をつくる
② 落下した生物が水田に戻ることのできる経路を確保する
島としてはベステックロックロール(STW200, 400; ネットジャカゴ)を利用しました.また,ロックロール(ネットジャカゴ)の設置箇所を排水口直下とし,カエル程度であれば水田に回帰できるようにしました.残念ながら,魚類が水田に回帰できるようにするためには,まだまだ技術的課題があります.どのような結果が得られるか,今後が楽しみです.             

[木村保夫]

[2006年5月23日]

2006/03/17(金)岐阜県 長良川 ~伝統工法“聖牛”へのロックロールの使用~

岐阜県長良川で、河川の中に棒状の資材が組み合わさったオブジェのようなものを見ることができます。このオブジェ、実は『聖牛(せいぎゅう)』という河川を 守る伝統工法の一つ。木材を組み、重しの役割をする「蛇カゴ(網の中に石を入れたもの)」をその上にのせただけのシンプルな構造をしています。

この聖牛は、減勢効果や導流効果が期待される透過性の水制工であるため、急流河川の水衝部などに配置されています。
今回、長良川の聖牛において、重しの役割をする蛇カゴ部分にべステック・ロックロールが使用されました。


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遠景からはオブジェのように見える
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長良川の聖牛
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(参考)聖牛の構造イメージ図


従来使用されている蛇カゴは鉄製のものを使用しているため、出水時などに大きな衝撃が加わると破断してしまう恐れがあります。しかし、今回使用することになったべステック・ロックロールは、 無結節網となっているため、万が一ネットの一部に破断が起きてもこれを起点に次々にほつれてしまう心配はありません。また、中詰の石を充填した状態で運搬 ができることが、大きな利点でしょう。今回は、長良川河川敷で現地の玉石を充填し、利用しました。網自体がフレキシブルであるため複雑な形状の設置場所に も対応できます。


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聖牛は構造上、隙間が多いので時間の経過と共に、様々な動植物の住処になりうるものです。設置後、ベステック・ロックロールには、周囲の玉石と同様に水中に沈んでいるネット自体にも藻類が付着し始めています。

少しずつ堆積される土砂や周囲のコンクリートブロックとともに、水中の生物にとっても有効な空間となって欲しいものです。

[松岡義宏]

[2006年3月17日]

2006/03/01(水)大阪府 南星台傍示川ホタル保全事業

[2006/3/1]
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作業全景
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ホタル保全活動の案内看板
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職人顔負けの動きです
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ベストマンロールへの植栽中
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ヤシ繊維基盤苗 セキショウ
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何やら話し込んでます。
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1年前に実施した試験施工区
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1年前に実施した試験施工区
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お疲れ様でした!ハイ、チーズ!


交野市南星台の傍示川では地元住民の方々がホタルの保全・再生事業に取り組んでいます。現場に辿り着く5分前までは非常に交通量が多い地域なのですが、現場付近は空気も風景もガラっと変わり、異空間に飛び込んだようなそんな気分になる場所です。区長さんを始めとした地元の皆さんの「ホタルが安心して生活出来る場所を守り育てていきたい」という熱くて優しい想いがこの現場には一杯一杯詰まってます。
これまで本流部においては一時的な出水で川岸状態がなかなか安定せず水際の植生定着が困難でした。丈夫なポリプロピレン製ネットにヤシ繊維を高密度で充填したベストマンロールは、河岸を浸食から守り、同時に水際の植生基盤として高い効果を発揮します。そしてここに5pot/mの植栽密度でロールからの脱落・流亡が起き難いルートボール(ヤシ繊維を基盤にした水生植物苗)を植栽しています。現場の環境条件から植物種はセキショウ(サトイモ科・常緑)が選択されました。
試験施工を実施した区間では既にセキショウがしっかりと活着しています。少し気が早いかもしれませんが、次回は緑あふれる水際と飛び交うホタル・・・そんなご報告が出来ればと思っています。南星台の皆さん、引き続きがんばってください!!また応援行きます。



[2006年3月1日]

2006/02/22(水)東京都 花畑川

[2006/04/21]
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ベストマンパレット設置ヶ所.
 
 
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ベストマンパレット設置ヶ所.
水際に良好な植物群落が形成された.
     
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ベストマンパレット設置ヶ所.
玉石と植生の組み合わせにより良好な
景観が形成された.


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対照ヶ所.
 
 
 
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対照ヶ所.
植生の定着は無く,表土の流出が
著しい.
     
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対照ヶ所.
表土が流出したままであるため,
玉石が目立つやや荒廃した景観が
維持されている


 施工後およそ1ヶ月後に状況確認のため現場を訪れた.導入した植物は在来種で,日本各地に普通に生育する種類の植物であるアゼスゲとカサスゲとした.写真上段はベストマンパレット設置ヶ所で,下段は対象ヶ所である.ベストマンパレット(植栽済み植生パレット BP800)から成長した植物は良好に成長していることが確認された.設置から僅か1ヶ月後ということで,まだ植物が群落を形成していないため,遠目にはその違いはあまりよく分からない.しかし,写真から明らかなように,ベストマンパレットを設置した箇所では,良好な水辺の景観が形成されつつあることが分かる.一方,対照ヶ所においても一部で植物の定着が認められているが,タガラシ等一部の湿生植物を除き,そのほとんどが陸上植物であった.また,外来種であるネズミムギの生育が卓越していた.不思議なことであるが,外来種による植生が荒廃した景観を形成するのに対し,在来種の水生湿生植物による水際の景観はどこか”ほっとする”ものがある.都市河川において外来種を排除することは技術的,物理的に極めて困難であるが,できるかぎり在来種が優占する川づくりを実践していきたい.

[木村保夫]

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