2010/08/23(月)三重県 大堀川支川 ~水位の上下変動を克服せよ~

大堀川支川では多自然川づくりが実施されています。堀込み河道の直線的な河川に、植生帯を設けてエコトーンを創出することが計画されました。植栽済みベストマンロールやベストマンパレットの出番です。私たちは大堀川の本川にてヒメガマ、ツルヨシ、ヨシなどの種子および苗を採取し、これを持ち帰り、生産圃場にて大堀川産ベストマンロールとベストマンパレットを生産しました。
余談ですが、植物採取した大堀川本川では様々な植生が自由に生育し、その中にたくさんの魚や貝類が見られ、ここは多様で自然豊かな環境なんだなぁとすがすがしい気持ちで作業を行いました。

生産圃場での生産に先だって、試験施工が行われました。
というのも大堀川は河口に近く、干満の影響で一日の間に水位の上下変動があります。水生植物の活着にとって安定的な水位は必須条件です。干上がったり水没 したりというストレスで、活着できなくては困ります。そこで最も生育しやすい設置高を確かめるために、高さを3種類に変えて植栽済みベストマンロール(ヨシ)を設置して様子を見ました。結果は、どの高さもヨシがちゃんと生育していました。しかし設置高が高いと侵入雑草が多く認められ、設置高が低いと雑草はほぼなくヨシのみが生育してたということが特徴的でした。


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ヒメガマ苗の採取時の状況
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試験施工時の状況
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試験設置した植栽済ベストマンロール


今現在(2011年4月8日)、施工しているさなかです。堀込みおよび干満の影響がある河川なので、作業員の方々は施工に苦労しておられるようです。写真のように特製吊り具で、上からおろしながら順次据えてもらっています。
今回は植栽済みベストマンロールの前面にロックロールを設置しています。ロックロールは植栽済みベストマンロールを固定する他、洗掘防止機能、土をトラップしてロールから伸びた植物が活着する事を期待しています。

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2007/09/07(金)大阪府 松尾川上流ワンド整備事業 ~ワンドのビオトープ機能とその再生~

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大阪府和泉地方を流れる松尾川の上流域において 河川公園整備と併せて河川生態系保全・再生のためのワンド整備が実施されました。 「湾処」と書いてワンド・・・昨今ではこのワンドを備える河川というのはほとんど見られなくなってきましたが、ワンドは稚魚や鳥類の生活の場として、また 水辺の生き物にとっての出水時における避難場所として機能する河川生態系にとって非常に重要な舞台となります。ツ黴€ 人工的にワンドを新しく整備するというのは決して容易な事ではありません。せっかく整備しても生き物が集まってこない、出水によりワンドそのものが崩壊し てしまう、土砂堆積によりワンドが完全に埋まってしまう事も数多く報告されています。また植生という側面にも湿地状態がうまく保てなかった結果、ワンド周 囲が外来の陸生種(セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ等)に覆い尽くされてしまったり、逆に裸地(無植生)の状態が継続的に続いてしまったりという 問題が生じる事があります。ワンドでの豊かで安定した我が国本来の水辺生態系構築のためには、施工時段階における水辺の植生整備はやはり必要となるケース が多いのではないでしょうか。

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2006/02/22(水)東京都 花畑川

[2006/04/21]
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ベストマンパレット設置ヶ所.
 
 
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ベストマンパレット設置ヶ所.
水際に良好な植物群落が形成された.
     
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ベストマンパレット設置ヶ所.
玉石と植生の組み合わせにより良好な
景観が形成された.


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対照ヶ所.
 
 
 
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対照ヶ所.
植生の定着は無く,表土の流出が
著しい.
     
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対照ヶ所.
表土が流出したままであるため,
玉石が目立つやや荒廃した景観が
維持されている


 施工後およそ1ヶ月後に状況確認のため現場を訪れた.導入した植物は在来種で,日本各地に普通に生育する種類の植物であるアゼスゲとカサスゲとした.写真上段はベストマンパレット設置ヶ所で,下段は対象ヶ所である.ベストマンパレット(植栽済み植生パレット BP800)から成長した植物は良好に成長していることが確認された.設置から僅か1ヶ月後ということで,まだ植物が群落を形成していないため,遠目にはその違いはあまりよく分からない.しかし,写真から明らかなように,ベストマンパレットを設置した箇所では,良好な水辺の景観が形成されつつあることが分かる.一方,対照ヶ所においても一部で植物の定着が認められているが,タガラシ等一部の湿生植物を除き,そのほとんどが陸上植物であった.また,外来種であるネズミムギの生育が卓越していた.不思議なことであるが,外来種による植生が荒廃した景観を形成するのに対し,在来種の水生湿生植物による水際の景観はどこか”ほっとする”ものがある.都市河川において外来種を排除することは技術的,物理的に極めて困難であるが,できるかぎり在来種が優占する川づくりを実践していきたい.

[木村保夫]

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2005/04/01(金)神奈川県 いたち川(紅葉橋)~植物群落の機能を活かす~

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 神奈川県いたち川は1993年3月ベストマンシ ステムが日本で初めて採用された河川です.紅葉橋付近ではベストマンパレット(ツルヨシ)は水の流れを制御するための植物による水制として導入されまし た. 施工地点には自然に形成された淵がありましたが,河川改修においてもこの淵を保存できるよ,置き石による水制工の設置などの配慮が行われています.施工は 水制の設置とその後の河川の応答を見ながら行われました.淵周辺に設置されたベストマンパレットは水の勢いを弱めると共に砂をトラップし,淵の維持に貢献 しています.

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2005/01/25(火)千葉県 小野川

[2005/08/02]
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良く繁っています
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マコモ


 半年ぶりに現場に行ってみました.現場に行くときはいつも受験の結果発表の様にドキドキするものです.現場に行ってみると,青々とマコモが成長(しすぎるぐらい)していました.きっと,栄養塩が豊富にあるのでしょう.写真撮影をしていると,近くの橋から中学生の男の子と女の子が数名,こちらの方を指さしながら何やら話していました.そう言えば,植栽会をしたのは小学校6年生だったので,もしかしたらこのマコモを植栽した時の彼らかもしれません(私のことを怪しいおじさんであると話していたのかも(笑)). これまで,単調であった河川にちょっとした変化ができたので様々な生き物が定着していまいた.メダカやボラの子供,そしてナマズにウシガエルのオタマジャクシ.結構子供たちが遊びに来るようになったとのことでした.

[木村保夫]

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