大阪府 松尾川上流ワンド整備事業 ~ワンドのビオトープ機能とその再生~
大阪府和泉地方を流れる松尾川の上流域において 河川公園整備と併せて河川生態系保全・再生のためのワンド整備が実施されました。 「湾処」と書いてワンド・・・昨今ではこのワンドを備える河川というのはほとんど見られなくなってきましたが、ワンドは稚魚や鳥類の生活の場として、また 水辺の生き物にとっての出水時における避難場所として機能する河川生態系にとって非常に重要な舞台となります。ツ黴 人工的にワンドを新しく整備するというのは決して容易な事ではありません。せっかく整備しても生き物が集まってこない、出水によりワンドそのものが崩壊し てしまう、土砂堆積によりワンドが完全に埋まってしまう事も数多く報告されています。また植生という側面にも湿地状態がうまく保てなかった結果、ワンド周 囲が外来の陸生種(セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ等)に覆い尽くされてしまったり、逆に裸地(無植生)の状態が継続的に続いてしまったりという 問題が生じる事があります。ワンドでの豊かで安定した我が国本来の水辺生態系構築のためには、施工時段階における水辺の植生整備はやはり必要となるケース が多いのではないでしょうか。
造成工事時(上流側から撮影) | 搬入された植栽済みベストマンロール | 空飛ぶベストマンロール(笑) |
ベストマンシステムは初期の水辺植生を整備する上で、絶大な効果を発揮します。当ワンド工事においては最も水際に近い部分では植栽済みベストマンロール(BRP303スゲ・写真上)が、その背後にルートボール(BC06ツルヨシ)及びベストマンネット(BT170)が設置されています。そして本川との合流部においては出水時の水あたりを考慮してロックロール(STW400ネットジャカゴ)が 根固め材として設置されています。通常の植栽では施工後のちょっとした出水で生育基盤となる土壌や植物苗そのものが流亡してしまいますが、ベストマンシス テムでは十分に根茎を発達させた植物苗とヤシ繊維素材を組合せて「植物を固定させる」事を可能にしています。それぞれの環境に適した水辺植物がしっかり根 を下ろせば、植栽基盤となる「水辺の土壌を安定させる」事に繋がります(植生護岸)。
本川合流部付近のロックロール | 植栽済みベストマンロールの固定 | 合流部(ロックロール+ベストマンロール) |
設置2週間後の状況 | 増水直後の状況 | 堆積砂から頭を出したツルヨシの若芽 |
施工後間もなく、激しい降雨により本川と併せてワンドの水位が上昇し、完全に浸水しましたが、多少の土砂堆積を受けながらも導入した水辺の植物には一切の被害は認められませんでした(上写真)。
これから植物の成長と併せてこのワンドでどんな生き物達が生活を始めるのかとても楽しみです。またこのワンドが近隣の子供達の身近な自然体験の場として機能することを期待しています。