ホーム 特集 <レビュー記事>降雨時に急に水位が上昇する都市河川に抽水植物群落を創出する

<レビュー記事>降雨時に急に水位が上昇する都市河川に抽水植物群落を創出する


 

都市河川の抽水植物01

 最近ではゲリラ豪雨などにより急激に水位が上昇する都市河川が増えています。急激な水位の上昇は流速が早くなるだけではなく,津波の様な水撃を生じることがあります。

一般的な河川では,設計流速や河床勾配,あるいは,周囲の植生から,どのような植物をどのように設置すれば良いか,おおよその検討をつけることができま す。しかし,ゲリラ豪雨とそれに伴う急激な水位の上昇という特徴を持つ都市河川では,これまで,私たちが用いてきたヤシ繊維を中心とした方法では植生を定 着させられないことが分かりました。

急激な水位の上昇によって生じる水撃は,私たちの想像を上回るものでした。工事現場の担当者に話を聞いてみると,積み上げた1t土嚢がながされる,幅 20cmほどのH鋼が押し流されるというものでした。こうした環境条件下で果たして植生を定着させることができるのだろうか。しばらく,頭をひねる日々が 続きました。しかし,そのヒントは現場にこそあるものです。期待した植物ではありませんでしたが,松板と吸出防止材の1cmあるかないかという僅かな隙間 にコゴメイの定着を認めることができました。コゴメイは湿地に多い植物ですが水生植物ではありません。コゴメイは吸出防止材にしっかりと根を張っていて, とても引き抜ける状況ではありませんでした。ここで,はっと気がつきました。植物によってはこうした水撃に対しても枝葉が折れない種類があり,それは必ず しも水生植物とは限らないということ。そして,もう一つ,植物が流出する仕組みは,生育基盤が流出し,次いで,植物が流出するというものでした。

理屈が分かれば,後は,流出しない生育基盤を開発するだけです。しかし,事はそう簡単には運びません。どのように植栽基盤に固定するか,流出しない生育 基盤とは何か,そこにどうやって植物を植栽するのか,技術的課題が山のように出てきました。開発に取り組んで6,7年経った頃,ある試験植栽において比較 的良好な成果を得ることができました。その結果を基に製品化されたのが合成樹脂基盤ベストマンパレットです。

柔軟性のある特殊な樹脂マットはマット表面を早い水流がながれても,その下の土壌が吸い出されない特殊なもので,そこにあらかじめ植物が植栽,育成され ています。もちろん,生育基盤は腐りませんので,この基盤を用いれば,植物をコンクリートブロックなどに直接結束固定することができます。

この合成樹脂基盤ベストマンパレットによって,これまでほとんど不可能であった,急激に水位が上昇する都市河川のような物理的に厳しい河川環境においても植生を創出することが可能になります。

不思議なもので,今までどこに生息していたのか,こうして創出された植生には様々な生物が寄り添うようになります。擁壁の高さは10m以上もあります。遠目からはまず気が付くことはないでしょう。しかし都心の都市河川でハグロトンボが見られるようになりました。

(2012/1/17 木村保夫 tel: 03-5643-0305,e-mail: y-kimura@especmic.co.jp)

都市河川の抽水植物02 施工中の都市河川。この河川では河床が掘れたため護床工事が行われた。この時点では植生は皆無である。
都市河川の抽水植物03 護床ブロックの脇にコンクリート沈床が見えるが,ここに植物を植栽する計画であった。  
都市河川の抽水植物04 ゲリラ豪雨などにより多くの都市河川では急激に水位が上昇する。その結果,流れの先頭で水位差が生じて水撃が生じる。      
都市河川の抽水植物05 コゴメイは吸出防止材に根を絡ませて生育していた。こうした環境でも植物の定着が可能であることが分かった。しかし,コゴメイは外来種であるのでそのまま使用するわけには行かなかった。在来種を選択する必要があった。      

 

都市河川の抽水植物06 都市河川において定着したセキショウ。その他,ツルヨシなどが植栽された。      

 

都市河川の抽水植物07 植物群落が形成されると,どこからともなく生き物が寄り添ってくる。あのコンクリートの河川にハグロトンボが訪れるようになった。

カテゴリ:在来種による緑化

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