<Topics!>ベストマンロールに使用されているポリプロピレンネットの理由
ベストマンロール外周のネットにはポリプロピレンが使用されています.
「植生ロールは天然繊維であるから,いずれは分解されて土 にかえる・・・・」であるとか,「ポリプロピレンネットは化繊であるから・・・」といったことを耳にすることがあります.自然を復元するのであるから,全 て天然素材であった方がよいということであると思います.確かに納得できる考え方ですね.
しかし,ベストマンロールの外周のネットには敢えてポリプロピレンネットが採用されています.これでは何となく時代に逆行しているような気がするかもしれませんが,実ははっきりとした技術的裏付けと明確な目的があるからならではの決定なのです.
マニラ麻ネットのベストマンロールを作ってみました.ネットがすぐに切れてしまい,使い物になりませんでした.・・・失敗しました. |
ヤシ繊維ネットの植生ロール.試験的に実河川に設置されたものです.設置1年後の状態.環境条件にもよりますが,この事例ではヤシ繊維ネットはボロボロになってしまいました. |
ベストマンロールが最も歴史のある植生ロールであることを 忘れてはいけないでしょう.私たちもその歴史の中で,天然繊維ネットを使用した植生ロールを実際に使用したことがあります.天然繊維には例えば,ヤシ繊 維,あるいはマニラ麻繊維が検討されました.しかしどちらとも,ロールへのヤシ繊維の重点密度や耐久性について満足できる結果を得ることができませんでし た.天然繊維では弱すぎるのです.例えば,マニラ麻などは,非常に強靱な繊維であると思われますが,ネットが簡単にちぎれてしまい,また,水中では1年も 立たないうちにボロボロになってしまいました.
単に素材を販売することであれば,天然繊維ネットの植生 ロールは顧客に対して魅力的な響きを伴っています.しかし,ベストマンシステムの目的は,自然環境の修復や植物による護岸,あるいは水質浄化などで(バイ オエンジニアリング),様々な環境で植物を確実に定着させ,機能させることにあります.この場合ベストマンロールは初期の段階で植物の安定した生育基盤と して機能します.少なくともそれまでに分解してしまうようでは困ってしまうわけです.
大湖沼や河川中流域では波浪や流水のインパクトが強い場所 では,天然繊維ネットでは,あっという間にロールそのものが流出してしまいます.ベストマンシステムではこのような場所でも植生の復元が可能ですが,その 一つの理由に,ベストマンロールが安定した基盤として長期間機能するからです(例 >>諏訪湖の事例,姿川の事例).
ですから,現時点では,最善の方法としてベストマンロールのネットにはポリプロピレンを採用しています.しかし,現在では生分解性繊維が次第に市場に流通されるようになってきました.将来的にはこれらの素材についても取り組んでいきたいと思っています.
天然繊維ネットが悪いわけではありません.要するに,使い分けが大切と言うことですね
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・植物の安定した生育基盤として機能すること |
ポリプロピレンネットを使用したベストマンロールのメリットを以下に記します.ポリプロピレンがよいと言うことではなく,強靱なネットがよいと言うことです.
次の例はドイツでの比較ですが,ベストマンロールでは高密度でヤシ繊維を充填することができますが,弱いネットを使ったロールでは,ネットが破損してしまうため充填密度を高くすることができません.ですからヘナヘナです.いくら値段が安くても,これではちょっと・・・.
また,ベストマンロールでは,施工時に,ネットにフックを かけることで簡単に移動する事ができます.そのため,現場での取り扱いがとても容易です.さらに,ネットに耐久性があるので,植栽済みのロールを作ること が可能です.育成中にネットがボロボロになってしまったら,もはやロールではないですね.
植栽済みベストマンロール育成風景.ベストマンロールに使用されているネットがポリプロピレン製であるために可能である.植物種はヨシ | 植栽済みベストマンロールの出荷風景.強靱なポリプロピレンネットを使用しているため,ネットにフックをかけて吊り上げることができる. |
「主役は植物です」・・・,ベストマンシステムが実践しようとしていることを一言でいいあらわすとこのような言葉になるかもしれません.植物を確実に定着させるための基盤として植生ロールが存在します.足下を確実に固めることが,何にもまして重要であると思います.