2005/04/01(金)神奈川県 いたち川(紅葉橋)~植物群落の機能を活かす~

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 神奈川県いたち川は1993年3月ベストマンシ ステムが日本で初めて採用された河川です.紅葉橋付近ではベストマンパレット(ツルヨシ)は水の流れを制御するための植物による水制として導入されまし た. 施工地点には自然に形成された淵がありましたが,河川改修においてもこの淵を保存できるよ,置き石による水制工の設置などの配慮が行われています.施工は 水制の設置とその後の河川の応答を見ながら行われました.淵周辺に設置されたベストマンパレットは水の勢いを弱めると共に砂をトラップし,淵の維持に貢献 しています.

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設置4ヶ月後(2005年7月)
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設置前(2005年4月)


 ベストマンパレットにはあらかじめ植物が植栽,育成されているので,設置から僅か4ヶ月程度で目的とする群落を形成することができます.そのため,設置から数ヶ月で水制として,あるいは土砂トラップとして機能します.


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 水あたりの激しい前面部では一部ベストマンパレットがめくれ上がっていますが,既に根が地面を緊縛しているため,全体がめくれ上がることはなかった.また,ツルヨシからランナーが伸長し,再び群落を形成する自己修復機能も植生護岸の特徴である.


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上流側の外来植物群落.
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全景.
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下流のツルヨシ群落.


 また,ベストマンパレットの効果として,導入した植物が群落を形成することで,主として一年生草本で構成される外来植物群落の形成を抑制し,目的とする植物群落を速やかに形成することができます.


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設置4ヶ月後(2005年7月)
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設置前(2005年4月)


今回はさらに,試験的に蛇篭への植栽を試みまし た.ベストマンパレット(ツルヨシ)を蛇篭に結束固定したものです.ツルヨシは礫河原に生育する植物であるため,蛇篭への定着が期待されます.2005年 7月の状況は,地面に植栽したものと比較するとあまり良好に生育していません.日陰であることや流水が直接あたる場所であることが影響しているのかもしれ ません.継続的なモニタリングが必要ですが,設置から4ヶ月しても流出せずに残っていることから今後の生育を期待することができます.

[木村保夫]

[2005年4月1日]