1998/03/11(水)岐阜県 勝賀大池 ~ため池における植生護岸の活用~

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設置後1.5年の状況.水際に水生植物群落が形成された.
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水際にベストマンロール(植生ロール),
その背後にベストマンパレット
(植物種:ヨシ,マコモ,フトイ)を設置.
1998年3月11日.






ため池の護岸には様々な方法が考えられます.植生護岸は単なる修景緑化ではなく,水生植物を繁茂させることにより,波浪による湖岸の浸食を防止します.植生護岸の良い点は,波浪を反射させず,吸収させることです.そのため反射波による対岸の浸食を防止します.また,写真からも明らかなように,植生護岸を形成すれば,多くの生物の生息環境として機能します.さらに,ある程度は水質の浄化も期待できるでしょう.


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植生護岸(植物種:ヨシ).植生護岸は波浪のエネルギーを
吸収し,あまり反射させない特徴を持っています.
また,生物の生息環境としても機能します.
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左:練り石張り護岸,右:コンクリートブロック護岸.
このような護岸形状でも,ベストマン植栽済みロールを設置するなど
して,緑化を行うことも可能です.






植生護岸の形成には,初期の安定した基盤と適した水生植物種の選定が重要です.ベストマンシステムでは,安定した生育基盤(ヤシ繊維基盤)と植物とを一体化させることにより,確実に植物を定着させ,植生護岸を形成させることができます.

ため池に植生護岸を 形成するためにはいくつか重要なポイントがあります.一般に多くのため池では,農期に併せて水位が変動します.さらに,冬季にはほとんど水が無くなってしまう場合もあります.そのため,導入する植物の種類や植栽する高さの決定が,植生護岸形成の正否を決めます.ため池の環境条件は様々であるため,一概には 言えませんので,詳しくはベストマンシステム研究会にお問い合わせ下さい.

 とても大切なこととして・・・ 

現在ため池 の自然は身近な自然として非常に重要となっています.ため池によっては,非常に多様な生物を保持しているところもあります.この様な環境を再び短期間で作り上げることは非常に難しいため,積極的に保全することが大切であるでしょう.ベストマンシステムではため池の護岸の緑化復元を短期間で行うことは出来ますが,必ずしもこの複雑な生態系を修復できるわけではありません.

ですから,ため池の自然の修復は生物調査から慎重に行った方が良いと思われます.ベストマンシステムの適用は,コンクリート護岸や練り石張り護岸により,既に自然や生物が失われてしまった環境において積極的に活用すべきでしょう.

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ベストマンパレット(植栽済み植生マット)は0.8×1.25mの座布団状の水草苗です.ヤシ繊維の基盤に水生植物を植栽し,圃場で十分に育成させた製品です.植物の育成に土を使用していないため計量で取り扱いやすく,施工性に優れます.


植物苗の植栽とは異なり,ベストマンパレットの設置は杭で固定するなど,土木的な手法で行われます.そのため,植物が活着するまでの間,波浪や流水のインパクトに対しても流出せず,確実に植物群落を形成させることができます.

[木村保夫]


[1998年3月11日]