1996/02/29(木)岐阜県 大安寺川 ~子供たちのあそび場として小川の再生~

大安寺川(daianjigawa)は各務原市鵜沼町に端を発し、木曽川合流点に至る延長2.3Kmの一級河川である。大安寺川では当初、低々水路の護岸として詰杭工が行われてきたが、水域と陸域の連続性が失われてしまう傾向にあったことや、水量に対する低々水路幅が広かったため水深が浅くなってしまったことなど、生態的な問題が生じてしまった。さらに、春から夏にかけて農業用水の取水を行うため、この時期には一時的に水無し川となってしまうこともあった。そこで、多自然型川づくりを行うにあたっては、次のことを中心に製品の種類とその組み合わせ、設置方法、導入植物種等の検討を行った。


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製品設置前の大安寺川の状況(1996年2月29日)
河川の延長も短く流域面積も小さいため、常時流量は少ない。しかし上流域で宅地開発が進み一時的な流出量は増大し、都市型の河川になりつつある。


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ベストマンシステム設置直後の状況(1996年9月24日)
詰杭の天端高が高く水域と陸域とを分断していたため、杭頭を切断して連続性を確保した。
また、春から夏にかけて生物が生息できるだけの水深を確保するためにベストマンロール(植生ロール)を設置することにより低々水路の幅を狭くした。ベストマンロールにはツルヨシ、ヤマアゼスゲ等を植裁した。


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ベストマンシステム設置直後の状況(1996年9月24日)
詰杭の天端高が高く水域と陸域とを分断していたため、杭頭を切断して連続性を確保した。また、春から夏にかけて生物が生息できるだけの水深を確保するためにベストマンロールを設置することにより低々水路の幅を狭くした。
ベストマンロールにはツルヨシ、ヤマアゼスゲ等を植裁した。


ベストマンロールによる植生護岸の形成と水域と陸域と連続性の確保


ベストマンロール(植生ロール)は円筒形のナイロンネットに、ヤシ繊維を高密度で充填した蛇籠状の植裁基盤である。ヤシ繊維は天然繊維の中でも非常に耐久性があり、不安定な河川環境においても植物に安定した生育基盤を提供することができる。ベストマンロールには必ず専用の植物苗であるベストマンコンテナを植え付けて使用するが、その植物種はそれぞれの環境条件によって異なる。大安寺川においては流速や底質の条件からツルヨシ、ヤマアゼスゲを中心に部分的にイ、マコモ、ガマを導入した。植生護岸とは、植物の根茎による護岸機能で、コンクリートの様な強度は期待できないが、コンクリートとは異なったやり方で、柔軟に水流を弱め、受け流し、河岸を浸食から守ることができる。また、そのもっとも大きな特徴として、護岸としての機能だけではなく水域と陸域とを連続させ多様な生物の生息空間を確保する機能をもつ。


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詰杭工による護岸とベストマンロールによる護岸との比較
詰杭工が、水域と陸域との連続性を遮断するのに対して(左)、ベストマンロールはそれを連続させることが可能である(右)。


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左:詰杭工による護岸
水衝部における護岸に適しており、コンクリートと比較した場合、杭と杭との空間が生物の生息空間となる。
右:ベストマンロールによる植生護岸
水当たりの弱い部分に適しており、詰杭工よりもはるかに多様な生物の生息を可能にする。

写真ではツルヨシとヤマアゼスゲが植裁されており、ベストマンロールを貫通してヤマアゼスゲの地下茎やツルヨシの芽が伸びている様子が分かる。また、水中には植物の細根が広がり、稚魚や水生昆虫の生息環境として機能していることがうかがえる。


多自然型川づくりの結果、春から夏にかけての渇水時期でも魚の生息が可能な水深が確保されたため、多くの水生生物が生息するようになった。また、大安寺川は比較的水質が良く透明度が高く、上から小魚の泳ぐ姿を見ることが出来る。そのため川に魚が戻ると共に多くの子供達が魚取りに集まってくるようになった。 都市周辺を流れる多くの河川では、人は無機質なコンクリート護岸と共に河川に対して無関心になる傾向があり、結果として無制限な家庭排水やゴミの投棄によって河川環境はさらに荒廃する。しかし大安寺川は河川環境をより自然に近い川に整備することで、周辺の人々の関心を再び河川に集めることに成功した。現在、大安寺川は子供達のあそびばや散歩のコースとして重要な位置づけになっている。


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川遊びに熱中する子供
河川環境は物理的環境と生態的環境が安定することなく常に変化している。
遊びに来るたびに状況が異なっており、そんな中での発見が川遊びの醍醐味ではないだろうか。



[1996年2月29日]
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