2023/11/23(木)林道法面におけるシカ食害対策の緑化(神奈川県内の事例その1)

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シカ(鹿)生息地における現状と課題

 神奈川県内のシカ(鹿)生息地では、シカの食害により植生が衰退し裸地化した状況が確認されています。裸地化した箇所がシカに踏み荒らされて崩れたり、さらに降雨によって土壌浸食が起こったりしており、林道に土壌が流出した箇所も見受けられます。実際に土砂崩れの被害を受けた民家の裏山を観察させて頂くと、シカの食害により下層の植生無くなってしまい、土壌浸食が至る所で起こっている状況でした。土砂崩れ等の大規模な災害を事前に防ぐためにも、まずは法面等を早期に緑化し、土壌浸食を防止させる必要があります。
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シカ食害により衰退しつつある植生
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土砂崩れの被害を受けた民家の裏山の状況

シカ不嗜好性植物(国内産在来種)を利用した法面緑化

 このような状況にある神奈川県内の山の林道法面において、シカの好まない植物(シカ不嗜好性植物)を用いて緑化を試みました。シカ不嗜好性植物の種子から緑化を試み、用いた種子は日本国内のみで採取もしくは生産した国内産在来種種子のみとしました。
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施工前(2022年11月4日撮影)
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施工後9ヶ月(2023年9月19日撮影)


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シカ不嗜好性植物の生育状況
 施工後、1年目である今年はシカ(鹿)の食害が若干あるものの、一年草のシカ不嗜好性植物が優占しており、その中には所々に多年草が良好に生育していることも確認できました。今後は、多年草が株を少しずつ拡大させていくと想定され、2年目以降の継続した緑化が期待されます。





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国内産在来種種子は5月から発芽する
 使用したシカ不嗜好性植物の種子は、全て国内産在来種種子のため、冬場は種子が発芽しませんが、翌春の5月頃から少しずつ発芽し、夏頃にかけて大きく成長していきます。シカの生息密度や環境条件(日当たりや水分条件等)によって結果は変わってきますが、シカ生息地においても本施工地のような条件であれば、シカ不嗜好性植物を用いることで早期に法面を緑化することができ、土壌浸食も抑制できることが分かってきました。

施工直後の景観にも配慮した植生シート

 今回の現場は、山の中の林道法面であったため、施工直後の景観にも配慮して、シカ不嗜好性植物の種子を配合した植生シート(在来種で緑化シート)を用いて緑化を試みています。この在来種で緑化シート(ヤシネット)は、林道工事等における法面保護工に利用することができ、ロール状で納品されるため一般的な植生シートと同様で容易に施工することができます。また、この在来種で緑化シートは生分解性の資材で製造しており、基盤は少しずつ自然にかえるため、山の中での利用にも適していると言えるでしょう。
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シカ不嗜好性植物の種子を配合した在来種で緑化シート
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施工は容易で景観にも馴染む


少しずつではありますが、シカ不嗜好性植物(国内産在来種種子)を用いた施工実績も増えてきていますので、シカ(鹿)の食害でお困りの方は是非、弊社までお問合せください

【東京オフィス 東建介】

2020/06/03(水)神奈川県 善明川

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神奈川県の善明川にべステック・ロックロール(ネットじゃかご)が設置されました。

べステック・ロックロールは化学繊維の網でできた繊維系のじゃかごで,地形の起伏に柔軟に対応することができます。ベステック・ロックロールは割栗石等が充填されているため,納入後すぐに設置可能です。

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現場である善明川では,護岸にもともと竹粗朶が設置されていましたが,川の流水よって竹粗朶がほとんど流出してしまっていた状況でした。そこで今回は,水源環境保全再生事業に伴い,竹粗朶に替わってべステック・ロックロールが採用されました。
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施工前の状況(2019年3月撮影)
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施工後の状況(2019年4月撮影)

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べステック・ロックロールの網は非常に細かい繊維を編み込んで作られており,水際など湿度の高い環境では水分を保持できるため,1年程度が経過するとネットに苔が生えることがあります。時間の経過とともにより自然な風景となっていきます。


ご興味のある方はお気軽にお問合せ下さい。

【東建介】

2010/07/08(木)神奈川県 引地川 ~チガヤマットとグリットシーバーV3~

 引地川は大和市が管理する準用河川です。
この引地川は都市の中を流れる河川で、人々に親しまれる川づくり、親水構造を検討しつつ整備がすすめられてきました。

平成22年度には親水護岸への緑化として、チガヤ法面が施工されました。弊社としては、神奈川県でのチガヤマットは初めての試みです。しかし、チガヤマットを水際に張り付ける工事では、河川の増水時に法面の土が吸出されて植生ごと流亡する危険性があります。そこで私たちは、グリットシーバーV3を併用することを提案しました。グリットシーバーV3はジオテキスタイルと吸出抑制材の不織布が一体となった構造で、護岸を形成しつつ浸食を防止することができます。

引地川の法面施工に関しては、このグリットシーバーV3を敷設後、その上にチガヤマットを張り付けました。この方法により、法面が吸い出されることなく緑 化され、かつ流速3m/sの流れに対応できると期待しています。施工が夏にさしかかっていたので、出荷や施工中の傷みや蒸れが心配でしたが、施工業者の 方々にうまく管理して頂いたおかげでチガヤも枯れることなく活着しました。


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施工状況.
平成22年7月8日撮影
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施工状況.
平成22年7月8日撮影
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生育状況(施工後4ヶ月).
平成22年11月18日撮影


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生育状況(施工後4ヶ月)
平成22年11月18日撮影


 引地川の結果によりグリットシーバーV3とチガヤマットを組み合わせることで、出水時の流れがある所でもチガヤによる緑化が可能であることが証明されました。

[2010年7月8日]

2005/04/01(金)神奈川県 いたち川(紅葉橋)~植物群落の機能を活かす~

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 神奈川県いたち川は1993年3月ベストマンシ ステムが日本で初めて採用された河川です.紅葉橋付近ではベストマンパレット(ツルヨシ)は水の流れを制御するための植物による水制として導入されまし た. 施工地点には自然に形成された淵がありましたが,河川改修においてもこの淵を保存できるよ,置き石による水制工の設置などの配慮が行われています.施工は 水制の設置とその後の河川の応答を見ながら行われました.淵周辺に設置されたベストマンパレットは水の勢いを弱めると共に砂をトラップし,淵の維持に貢献 しています.

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