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大阪府 石川河川公園 ~高水敷のチガヤ草地とセイバンモロコシ~

2009/6/1]

 

この時期はチガヤの植栽施工を実施した現場を見に行くのが楽しみです(正直若干の不安も抱きながらですが)。
ここ石川河川公園のあすか野草園の「(仮称)チガヤの丘(勝手に名付けてしまいました)」はさてさて・・・。「おっ、きれいに穂が出ている!!」、何とも嬉しい瞬間です。堤防の法肩で怪しく微笑みながらデジカメ片手にてくてく高水敷に下りていくと、「久しぶり」と言わんばかりにチガヤは可愛い穂を不規則に吹く風と仲良く踊ってみせてくれました。
ところがです・・・

 

以前から危惧していた写真左上のネズミホソムギ(ネズミムギ?)がびっしりとチガヤの丘を見事に囲んでいるではないか!!もちろんチガヤ群落内にも相当数生えてきていました。当現場における侵入種についてはセイバンモロコシに照準を強くあてていましたが、今はまだ時期的にセイバンモロコシはそれほど目立って見られません。
とるべき対処法はただ一つ。そうです、「刈取り」です。それも早急にです。結実を終え枯死してしまってからの刈取りでは来年更なる繁殖地拡大が高い確率で起きてしまいます。
携帯電話で当該緑地の維持管理を担当されている団体に連絡をとり、一斉刈取りを実施していただけることになりましたので、何とか一安心・・・。右上の写真はこの現場から少し離れたとある堤防の風景です。6月にこの枯草の景色はやはりどこか違和感があると思うのはきっと私だけではないと思います。何とかして私達の国、日本の緑を次なる世代に残し、あるいは取り戻していきたい。そんな想いを胸に私達は引き続き現場と向き合っていきます。


[2008/8/26]

 
現場のすぐ真向かいの堤防法面(セイバンモロコシの大群落)    セイバンモロコシの穂

前回のご報告からわずか1ヶ月、その前は約2年、何て極端なのでしょう(申し訳ありません)。
今回は以前から何度もチガヤ草地内に侵入してきている代表種として掲げてきた植物、セイバンモロコシに少し焦点をあててみます。この現場に限らず少なくとも大阪近郊でこの時期、目立って私の視界に飛び込んでくるセイバンモロコシ・・・。
セイバンモロコシはヨーロッパ地中海地域が原産とされているイネ科の多年生植物で、高さは1~2m近くにまで成長し、7月下旬ごろから開花(出穂)し始めます。帰化植物として東北以南の各地で猛威を奮っているようで、堤防一面がこのセイバンモロコシに埋め尽くされている風景はこのあたりでも特に珍しくありません。

2006/04/25]

   
刈取試験実施区               セイバンモロコシの根系

そこでごく単純な発想ですが、「開花直前の刈取りは一定の効果が得られるのでは?」と、現場のすぐ向かいのセイバンモロコシ群落の一部を試験的に7月31日に刈取ってその状況を追跡してみる事にしました(この時点ではこの区域内で出穂している個体はまったくありませんでした)。
ちなみに群落内の数箇所でスコップを入れセイバンモロコシの根系部分を見てみると、草丈が大きい割にはチガヤのそれと変わらない比較的浅い所を地下茎が横走していました(上写真)。この現場でしか確認していませんので確かな事は言えませんが・・・。

 
2008/7/31(刈取直後) 刈取実施区 対照区
   
2008/8/20(約1ヶ月経過) 刈取実施区 対照区

約1ヶ月経過して現場を訪れてみると、写真の通り対照区ではほとんどの個体が出穂しているのに対し、刈取を実施した区域内では葉茎の再生は始まっているものの出穂している個体は全くありませんでした。セイタカアワダチソウの様に刈取り後、例え葉茎は小さくとも何とかして開花するというタイプではないようです。
一度の刈取りだけでは既に根を下ろしているセイバンモロコシに明らかなダメージを与えた事にはなりませんが、少なくとも種子を生産させない、これ以上他へ拡げさせないという意味では7月後半の刈取りは高い効果が期待できそうです。
河川堤防の維持管理作業(刈取作業)は6月と10月に行なわれる事が多いので、図らずもセイバンモロコシにとっては都合の良い(開花・結実を邪魔されない)舞台となってしまっているのかもしれませんね。

チガヤ草地部 2008/8/20

さてさて肝心のチガヤ草地ですが、しばらく雨がまともに降らなかった事に加えてこの日照り・・・遠目に見るとイグサか?と思ってしまうくらいチガヤはみんなくるりと葉を丸めツンツンさせています。そうです、チガヤは怒っています。「喉が渇いたぁ。雨よ降れーー。」
と思ったら、この数日間雨がよく降っています。それではまた次回お会いしましょう。


[2008/07/16]

   
   

ご報告にずいぶん間が空いてしまいました・・・申し訳ございません。早いもので植栽工事からもう2年が経過したのですね。はい、チガヤは元気にたくましく育っています。ノカンゾウ・カワラナデシコもポツポツとチガヤに混じって愛らしい花を咲かせています。但し、植栽当初から危惧していた事もはっきりと見えてきました。そうです・・・侵入種の問題です。当現場周辺では3月~4月にかけてはセイヨウカラシナが、そして5~6月はネズミホソムギ?(すみません、前回のご報告でネズミムギと紹介した植物はよくよく観察してみるとネズミホソムギの可能性が高いという事が分かりました。ただ勉強不足ゆえ断定はできません。とりあえずライグラス類とさせてください。謝。)、そしてこれからの季節は石川の堤防法面で最も勢力を誇っているセイバンモロコシが一面に茂ります。いずれも種子生産能力の高い帰化植物で、当然ながら当チガヤ植栽地内からもこれらの帰化植物の発芽伸長が相当数認められるようになってきました。特にセイバンモロコシの侵入が著しく、そのためにチガヤの拡がりが抑制されてしまっているような状況です。

セイヨウカラシナ

ネズミホソムギ?

セイバンモロコシ

これら繁殖力の非常に高い帰化植物の侵入を受けやすい条件下でチガヤ群落を整備するためにはやはりまずは「いかに早期に密度の高いチガヤ群落を成立させられるか」という事が重要になります(そういう意味では前回のご報告内でも述べたように16株/㎡という植栽密度はこの現場に関しては手薄だったのかもしれません)。そして次に維持管理、つまり地上部刈取の頻度と時期の検討が鍵になってくると思います(せっせと除草するのが最も確実な手段ですが・・・現実、難しいですよね)。
遠目にはチガヤ草地の感をまとってきてはいるのですが、その生育密度は決してまだ十分な状況とは言えず、チガヤに代わって優占種として君臨してやろうとセイバンモロコシの実生がワイワイガヤガヤ・・・。さてさて、これからがまさしくモニタリングという事になりそうです。

 
刈取作業前1(6/20) 刈取作業前2(6/20) 作業状況(6/20)
 
刈取後1 刈取後2 刈取後(全景)

諸々の理由でこの度弊社(+草刈精鋭部隊)自ら管理作業に挑ませていただく事になりました。実施日は6月20日。ちょうど先に掲げたネズミホソムギの種子が稔る直前、そしてセイバンモロコシがこれから夏の開花に向けて勢いよく葉茎を伸長させている時期です。
まずこの2種のこれ以上の繁殖拡大を抑える意味でこの時期の刈取は必須と考えます。

 

セイバンモロコシ

刈取3日後 再生してきたチガヤの葉

上の中・右写真は作業からわずか3日後の状況です。地際で刈取ったチガヤの基部からは早くも新しい葉が展開し始めていました。刈取に対してのチガヤの再生能力はやはり凄いですね。そしてその1ヵ月後の状況が文頭に掲げた6枚の写真です。分かり難いですが、セイバンモロコシの葉茎の再生もチガヤ程ではないにしてもだいぶ進んできています。セイバンモロコシの再生・開花度合によっては8月から9月にかけて再度刈取を実施する必要があるかもしれません。
・・・それでは今回はこのあたりで終わります。また追って状況ご報告させていただきます(また2年後というのは無しです、笑)。


[2006/06/28]

 
順調に成長するチガヤ 苗を掘り取って見ると・・・素晴らしい! カワラナデシコも元気
   
ネズミムギ他が早くも侵入 せっせと除草・・・汗が吹き出ました 癒しの一瞬

雨もたっぷり降り、チガヤは元気いっぱい・・・と、思いきや確かにチガヤは元気に成長していましたが、それ以上に多くのネズミムギが私の目に飛び込んできました。他にもセイバンモロコシやアメリカセンダングサの実生が!!
これらは全て夏もしくは秋に種子を生産する植物種であるのに何故・・・?現場発生土を使用したなら埋土種子からの発芽が考えられますが、そうではないこの現場にこれだけの侵入が1年目に起きるのは何故なのでしょうか。施工時に何らかの原因で客土内に種子が入り込んでしまったのか、もしくは法面から風で種子(去年生産されたもの)が飛ばされてきたのか、はっきりした原因は分かりませんがとにかくこのまま放置しては一気に拡大してしまう危険が高いため、急きょ除草作業に突入、炎天下の下で大量の汗を放出する事になりました(泣)。しかしヒバリの巣を発見し、少し気分的に回復(笑)。
この状況を見ると、好ましくない雑草の侵入が高い確率で予想される現場では、植栽初期の成育が比較的ゆっくりである16株/㎡というチガヤ(プラグ苗)の植栽密度は少し薄いのかもしれません。


[2006/04/25]

 
1ヵ月後 チガヤ苗は順調に成育 混植されたノカンゾウ他も元気です

竣工から約1ヶ月が経過致しました。植栽基盤にはバーク堆肥で土壌改良を施した客土が投入されたせいもあってかチガヤを含め植栽された苗は皆順調に生育を遂げているようです(ほっ)。まだ現段階では他種の侵入はほとんど見受けられません。チガヤは植栽当初の乾燥には耐性が低いのですが、今年の大阪は今のところ雨の日が多く生き生きとしていました。梅雨もしっかり降ってくださいと天に願いながら現場を跡にしました。


[2006/03/31]

 
施工中風景 堤防上より 施工中風景 高水敷 施工中風景 植栽マウンド
 
竣工時風景  竣工時風景 チガヤ苗間に混植されたノカンゾウ

石川は金剛山系と泉北の丘陵地に挟まれた南河内を流れる大阪を代表する一級河川の一つです。この石川の河川敷沿いに広がる石川河川公園内の約700㎡の範囲で、この度チガヤを主体とした生態的に多様で、且つ景観面にも優れた野草広場の整備の試みがなされました。
チガヤ(プラグ苗)は16株/㎡の密度で植栽され、所々にカワラナデシコ・オミナエシ・ノカンゾウ・ノアザミといった野草花物の混植が施されています。しかしながら隣接する堤防法面には外来種であるセイバンモロコシが勢力を誇っており、またネズミムギ等の牧草類やセイタカアワダチソウも広い範囲で見られるため、これらの侵入に注意しながら追跡を行なっていきたいと思います。

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