都市を支えるみどり ~ 宮城県 輪王寺 ~
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みどりは社会の公共財産です。
人々が集まり生活をしている都市において、みどりはかけがえのない存在です。
その質にとことんこだわったみどりは「ほんものの森」と呼ばれます。
100万都市仙台市には輪王寺があります。
[高野義智 (問合先)e-mail: y-takano@especmic.co.jp]
モニタリング
[2017/10/24]
春のサクラ、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪。
輪王寺の森が見せる四季折々の色を追ってきました。
ひとつの映像にまとまりました。
[高野]
[2016/11/23]
[高野]
[2016/11/11]
輪王寺の森づくり活動が緑の都市賞の緑の事業活動部門にて都市緑化機構会長賞を受賞しました。
トンネル工事で失われたスギ木立の後に自然度の高い樹林の創出を目指した植樹を行い、守り育ててきたこと。そしてその経験を東日本大震災からの復興に活かしていることが高く評価されました。
[吉野]
[2016/9/6]
[高野]
紹介
輪王寺は仙台市域の中心部,かつての仙台城下町の北部に位置する伊達家ゆかりの古刹です。東北地方の政治・経済の中心地である宮城県庁や仙台市役所から北に約2.5kmと近く,周辺は住宅地に囲まれています。(GoogleMAP)
輪王寺は,東西に伸びる北山丘陵の西端に位置しており,この丘陵地には北山五山とされる伊達家ゆかりの寺院や青葉神社があり,この一帯は昭和51年に仙台市の北山保全緑地に指定されています。
北山丘陵は,仙台市中心部とその北部に広がる住宅地の中間に位置するため,仙台市街地へのアクセス向上のため,輪王寺敷地の下を通り抜ける県道264号線北山トンネル工事が行なわれました。
輪王寺の参道にはかつて樹高20mを超える杉並木がありました。
平成17年から平成23年にかけて実施された北山トンネル工事に伴い,そのほとんどが伐採されました。
都市化により,私達の生活は快適で便利なものとなりましたが,その一方で,都市近郊に残されていた様々な生き物達の生息空間やその場所で育まれてきた生き物同士のつながりは失われました。
そこで,鉄やコンクリートのような無機質な材料ではなく,生命力あふれる本物の森づくりをコンセプトに参道の復旧に取り組み始めました。
将来を担う地域の子供たちに,多様な生き物が複雑に絡まりあい,循環している本物の森を残すこと,生き物社会は競争しながらも我慢しながら精一杯生き,共生している様を感じとってもらえる空間づくりがこの活動の原点です。
輪王寺の境内は地域の方々の散策路として活用されています。
森づくりでは,予め散策路や東屋,
ビオトープ池を配置しました。
今日では,散策路は森の中の小道となっており,メジロやヒヨドリ,シジュウカラ,ウグイスといった様々な野鳥の声を聞くことができます。
参道の杉並木が工事に伴い伐採されることから,その土地に合った多様な樹種による森づくりに着手しました。
その樹種を選定するにあたり平成16年3月23日に参道や境内の植生調査を実施しました。
調査や樹種選定は横浜国立大学名誉教授の宮脇昭先生の指導を仰ぎました。
平成16年から平成20年の5ヵ年に渡り実施された境内や参道への植樹祭ではその土地本来の高中木樹種26種(シラカシ,ヤブツバキ等),参道や林縁を彩る低木種24種,果樹10種類以上,約60種3万本を超える苗木を植樹しました。
これらの樹種はお互いに競争しあいながら成長し,時に我慢し,枯死するものもやがて朽ちて土になる仕組みとなっています。
当初4本/㎡で植栽しましたが,10年生以上の樹林では,2本/㎡にまで本数が減少し,その立地条件に応じて樹林の階層構造が形成されています。
境内を掃き清めた際の落ち葉は焼却するのではなく,地球資源として植栽地に戻しています。
落ち葉が堆積した樹林内の土壌は柔らかく,湿り気を帯びています。
この土は,多数の土壌動物の住処であり,雨をしばらく溜める,いわば小さなみどりのダムとして機能しています。
輪王寺の参道の下にはトンネルが掘られ,現在では交通量の多い道路となっています。
その上に広葉樹の森を再生することにより,都市側から見た景観では,より自然豊かな空間に感じられ,参道を歩く人からは,トンネルの存在や車通りをほとんど感じることのない静かな空間となっています。
輪王寺の敷地の一角は市道と接していますが,切土法面をコンクリート擁壁にする話もありましたが,周辺景観へ配慮し,「フォレストベンチ工法」という間伐材を用いた法面安定工法を採用し,さらに植樹を行ないました。
今日では,緑の壁となっています。
[吉野]