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生態系をデザインする
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2011年1月25日

ちょっと前の話になるが,ランドスケープデザインに生態系の要素を取り入れるというプロジェクトに参加したことがある.そもそも,デザインがなんたるかということがよく分かっていないので,プロジェクトでは色々と勉強になった.難しくも興味深いテーマだった.
 そういえば生物多様性条約締約国会議(COP10)が名古屋で行われた.生物多様性条約が何を目的としているかについてはここでは割愛するが,生物多様性や生態系に関しての認識は少しずつ広まりつつあるように思う.ただ,”生態系”とは何であるか,”生物多様性”とは何か,企業がそれに取り組むということは,何を意味するのか(企業活動を利益の追求と考えている限りにおいては),なかなか難しい課題には違いない.
 さて,プロジェクトに参加してまず感じたことは,生態系への理解である.おおかたの意見では,それは静的な何らかであった.だから,工事によって生態系を破壊するとかしないとか,そういう議論が延々と続いた.まぁ,間違いでは無いのかもしれないが,ならば,まず生態系とやらを見せてくれということになる.すると,今までの白熱した議論の前提が,実は極めて曖昧で漠然とした”思い”の上のものでしかないことに直面する.
 そうはいっても請けた仕事,目に見えるものをつくらなければ説明がつかない.だからどうしてもものの静的な空間配置に議論が傾く.難しい.本当に難しい.目に見えないものをつくって,どうです,凄いでしょ.といっても評価する側がひどく困惑するだけだ.
 生物多様性という言葉に対して至極シンプルな答えが,色々な種類の生物が居るこというもの.じゃ,動物園(笑)ということになってしまうが,さすがにそれはちょっと違うということになる.少し知っていると遺伝子が….という話になるのだが,そういう話に限って,あそことこことでは遺伝子が違うから.とかいう,もう(多分本人も)訳が分からない説明がでてきてしまう.そりゃ思考停止というもので,そんな単純な話じゃない.まぁそれは次に置いとこう.
 で,何が大事かということを考えると.まずは,物事の”切り口”ということだ.同じものでも切り口によって違ったものに見えるでしょ.で,異なる土俵にの人が集まって”生態系”という話をしても,そもそもその定義が異なっている.落とし穴.それは,専門分野にいればいるほど,学術的な定義が必ず正しい,と思ってしまうこと.ある顧客が”生態系”という言葉を使ったとしても,必ずしも,それが学術的な”生態系”を意味しているわけではない.それをさも得意げに知ったかぶりするのは極めて危うい.この場合,”生態系”という用語をとりあえず脇に置いておいて,本当は何をしたいのか,生態系という言葉を使わないで説明してもらうといい.すると,実は全然違うもの,例えば,安心安全健康とか免罪符とか政治力とか(笑),そういうものが出てくる場合もある.
 参加したプロジェクトの場合はどうだったのだろう.色々な意味で自己満足とも言える高い成果をあげたには違いない.しかし,真っ先に思うのは,生態系という学術用語に引っ張られてしまった自分自身の反省だ.明らかになったのは空間配置に時間軸を入れることの重要性と自分の持ちうるその具体的表現力の乏しさ.理解を得られない理由を相手に求める安易に留まりたくはない.知らずのうちに定義した自分の垣根を取り去る必要性を感じた.
在来種と生物多様性_110124_01
[木村保夫 e-mail: y-kimura@especmic.co.jp](2011/1/9)


カテゴリ:在来種による緑化



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