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今日のパリコレ チガヤマットの2つの方向性(2)
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2012年8月23日

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堤防法面の在来種による草地
 在来種を主体とした草地を大規模に創出しようとすると,具体的にそれをどうすれば良いのか,結構難しい話になります。とりわけ都市近郊では,ちょっと目を離すといわゆる荒れ地雑草を主体とした草地が成立してしまいます。在来種の草地をと思ってポット苗をいくらか植栽しても結果は同じで,結局人力で植栽した植物を残しながらの除草作業が必要となるでしょう。悪いことに,植物を根から引っこ抜くと,そこからまた雑草が発芽してきて荒れ地雑草草地が成立するという状況に陥ります。荒れ地雑草が外来種を中心としたものだと,さらに酷い状況ですね。
 そうなると,在来種の草地を頭に描いていても,結局は芝生広場となってしまうことが多いのではないでしょうか。実際の話をすると,今日まで張り芝以外には良い選択肢が無かったともいえます。
 では張り芝の良い点は何でしょう。1つ目はなんといっても価格が安いことです。このことは大規模に草地を創出することを可能にする重要な要素と言えます。
2つ目は,芝という植生で裸地を覆ってしまい,元から土壌に含まれる植物の種子が発芽しし難い状態にすることです。もちろん,これは完全ではありません。芝の目地などから様々な植物が発芽成長することも多々あります。時間が経てば,張り芝の上からも様々な植物が発芽してきます。
そこで3つ目は,芝草地は草刈りによって維持することができると言うことです。いくら様々な植物が発芽成長してきても,年間3~4回の刈り取り頻度の下では十分に成長することはできません。この場合,一般に芝が優占した草地が形成されます。
 こうした張芝の良い点から学べば,チガヤマットはその要件を十分に満たした製品といえます。もちろんチガヤマットを設置しただけではチガヤしか生育しませんので,同時にその他の植物の植栽が必要になります。チガヤ草地にはワレモコウ,アザミ類,在来タンポポ類,カワラナデシコ,ツリガネニンジンなど様々な植物が生育することが明らかになっています。ただ単にチガヤマットを設置しただけでは自然にこれらの植物が生えてくるわけではない。そのため,何らかの方法で植物の導入が必要となる。苗の導入にはφ9~10.5cm程度のポット苗を用いることもできますが,シャベルで植穴を掘らなければならないなど少々手間がかかります。そこでエスペックミックでは,比較的どこにでも生育している在来種を対象に種子の採集を行い,小さなセル苗(ルートボール・ミニ)を生産し,提供することにしています。これであれば,ちょっと穴を開けて苗を差し込むだけで植栽が完了します。在来種のルートボール・ミニにつてはチガヤマットと同様に要望に応じて,その地域の植物にも対応できるようにしています。
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チガヤマットに在来種を植栽してみました
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およそ1年半ほど放置しておきましたが,植栽した在来種も良好に生育しています
 維持管理に対しては,芝の場合と同じように草刈りでこれを行うこととします。草刈りの頻度はおおよそ年間1~2回で良いでしょう。この場合,一緒に植栽する植物も刈り取りに強い種類であることが条件といえます。堤防法面など定期的に草刈りが行われるような場所の植生を参考にすれば良いかもしれません。
 チガヤマットに導入する植物ですが,1年草で広範囲に分布している種類については,わざわざ苗を作らずに現地の土壌を撒き出すことで十分に対応することができるでしょう。一方,あまり種子が発芽しない植物や種子散布の範囲が限られている種類については施工前にその植物をあらかじめ掘り取ってき,施工後に移植を行うなどの対応が必要になります。こうした対応により,より多様な草地を短期間に創出することができると思われます。
 しかし,こうして創出した草地は実際にある在来種草地の代替とすることは,現時点ではまず不可能です。緑化資材の視点からは植物の植栽方法や種類などの話になりがちですが,実際の草地は土質,水分条件,特有の気候,そしてそこに生息する生物の相互作用など実に様々な要素が複雑に絡み合ってできているからです。少しずつですが,理想的な草地の創出の技術を蓄積していきたいと思います。
[2012/8/23] 木村保夫


カテゴリ:在来種による緑化



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