2011/04/20(水)埼玉県 越戸川 ~川がつくる川の形~

 改修前の越戸川は切梁式矢板護岸でしたが,埼玉県の水辺再生100プランの下,平成23年4月現在その再整備が進められています。越戸川では和光自然環境を守る会の方々が,毎年ジャブジャブ魚採り大会を行っており,お話を伺っているなかで,魚採りができる川をつくりたいとのことでした。私たちは河川の植生復元をその事業の一つにしていますが,この要望を実現するために,私たちの出来る範囲において,様々な検討を行いました。とにかく,川に入って遊ぶのに楽しい川にするためには,蛇行した流路に単調とならない水際の形状が求められました。

しかし,地元の方やコンサルタントの方から話を伺うと,越戸川はそれほど土砂供給がある河川ではないとのことでした。ですから,施工後に川が従来の流路に戻るにはかなり時間がかかることが予想されます。そこで,流路の蛇行形状は施工前のそれに基づいたものにしてあります。一方,水際についてはそれなりに護岸が必要であるとのことでしたが,可能な範囲で川がつくった川となるように,強度を保ちつつ,柔軟に形状が変形するネット蛇篭(ベステック・ロックロール)が用いられています。そして,その上に,ヨシ,ヒメガマ,フトイなどの植生パレット(ベストマンパレット)が設置され。初期の表土の流出を防止するとともに,速やかな植物群落を創出することが出来るようにしました。ここで使用された植生の一部については,和光自然環境を守る会の方々と一緒に採集したものを,圃場に持ち帰って植生パレットに仕立てたものとなっています。採集は5月に行い,翌年の3月に無事出荷しました。施工はまだ続いていますが,浸食や堆積などの河川の動きと植物の成長によってどのような川が形成されるのか,興味深く観察していきたいと思います。

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施工前の状況.
平成19年11月17日撮影.
 
 
 
 
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施工状況.
平成23年3月31日撮影.
 
 
 
 
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施工状況.
平成23年3月31日撮影.
水際にネット蛇篭(ベステック・ロック
ロール)を設置し,植生パレット(ベス
トマンパレット)で抽水植物を導入して
います.
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水際部にはネット蛇篭(ベステック・
ロックロール)が使用されています.

鉄線蛇篭と異なり,地形に柔軟に対応し,
且つ,錆びることがないため,川遊びに
おいて危険が少ない構造となっています.
平成23年2月21日撮影.
 
 
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ネット蛇篭(ベステック・ロック
ロール)の設置状況.

鉄線蛇篭と異なり,あらかじめ石が充填
されているため極めて短時間で設置する
事ができます.また,柔軟であるため,
微妙な水際の形状を形づくることが可能
で,且つ,設置後にも地形に合わせて形
状が変わります.
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現地の植物の採集状況.
 

平成20年5月6日撮影.
 
 
 
 
 


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現地の植物を植生パレットに
植栽している状況.

平成20年5月7日撮影.
 
 
 
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現地の植物の育成状況.
 

施肥を行っています.
平成20年6月3日撮影.
 
 
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現地で採集したヒメガマで生産した
植生パレット(ベストマンパレット)

十分に根茎が発達した状況.
 
 
 
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植生パレット(ベストマンパレット)
の設置状況.
専用のくさび型止杭で固定する.


[木村保夫(問合先)tel: 03-5643-0305,e-mail: y-kimura@especmic.co.jp]

[2011年4月20日]

2011/03/25(金)兵庫県 加古川水系東条川親水公園 やすらぎの景観づくり事業 ~多自然川づくり 出水に耐えたツルヨシ群落~

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東条川は兵庫県篠山市の黒石ダム三田市の大川瀬ダムを経て加東市、小野市内を抜けて加古川に合流する一級河川で、地元の方々には「母なる川」として親しま れる川です。しかしながら台風や集中豪雨による氾濫で度々沿川の家屋が甚大な浸水被害を受けてきた歴史もある川で、「水に親しむと共に、地域の防災への意 識を高める公園づくり」を掲げて当親水公園整備事業は進められました。

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2010/08/23(月)三重県 大堀川支川 ~水位の上下変動を克服せよ~

大堀川支川では多自然川づくりが実施されています。堀込み河道の直線的な河川に、植生帯を設けてエコトーンを創出することが計画されました。植栽済みベストマンロールやベストマンパレットの出番です。私たちは大堀川の本川にてヒメガマ、ツルヨシ、ヨシなどの種子および苗を採取し、これを持ち帰り、生産圃場にて大堀川産ベストマンロールとベストマンパレットを生産しました。
余談ですが、植物採取した大堀川本川では様々な植生が自由に生育し、その中にたくさんの魚や貝類が見られ、ここは多様で自然豊かな環境なんだなぁとすがすがしい気持ちで作業を行いました。

生産圃場での生産に先だって、試験施工が行われました。
というのも大堀川は河口に近く、干満の影響で一日の間に水位の上下変動があります。水生植物の活着にとって安定的な水位は必須条件です。干上がったり水没 したりというストレスで、活着できなくては困ります。そこで最も生育しやすい設置高を確かめるために、高さを3種類に変えて植栽済みベストマンロール(ヨシ)を設置して様子を見ました。結果は、どの高さもヨシがちゃんと生育していました。しかし設置高が高いと侵入雑草が多く認められ、設置高が低いと雑草はほぼなくヨシのみが生育してたということが特徴的でした。


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ヒメガマ苗の採取時の状況
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試験施工時の状況
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試験設置した植栽済ベストマンロール


今現在(2011年4月8日)、施工しているさなかです。堀込みおよび干満の影響がある河川なので、作業員の方々は施工に苦労しておられるようです。写真のように特製吊り具で、上からおろしながら順次据えてもらっています。
今回は植栽済みベストマンロールの前面にロックロールを設置しています。ロックロールは植栽済みベストマンロールを固定する他、洗掘防止機能、土をトラップしてロールから伸びた植物が活着する事を期待しています。

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2010/07/08(木)神奈川県 引地川 ~チガヤマットとグリットシーバーV3~

 引地川は大和市が管理する準用河川です。
この引地川は都市の中を流れる河川で、人々に親しまれる川づくり、親水構造を検討しつつ整備がすすめられてきました。

平成22年度には親水護岸への緑化として、チガヤ法面が施工されました。弊社としては、神奈川県でのチガヤマットは初めての試みです。しかし、チガヤマットを水際に張り付ける工事では、河川の増水時に法面の土が吸出されて植生ごと流亡する危険性があります。そこで私たちは、グリットシーバーV3を併用することを提案しました。グリットシーバーV3はジオテキスタイルと吸出抑制材の不織布が一体となった構造で、護岸を形成しつつ浸食を防止することができます。

引地川の法面施工に関しては、このグリットシーバーV3を敷設後、その上にチガヤマットを張り付けました。この方法により、法面が吸い出されることなく緑 化され、かつ流速3m/sの流れに対応できると期待しています。施工が夏にさしかかっていたので、出荷や施工中の傷みや蒸れが心配でしたが、施工業者の 方々にうまく管理して頂いたおかげでチガヤも枯れることなく活着しました。


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施工状況.
平成22年7月8日撮影
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施工状況.
平成22年7月8日撮影
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生育状況(施工後4ヶ月).
平成22年11月18日撮影


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生育状況(施工後4ヶ月)
平成22年11月18日撮影


 引地川の結果によりグリットシーバーV3とチガヤマットを組み合わせることで、出水時の流れがある所でもチガヤによる緑化が可能であることが証明されました。

[2010年7月8日]