2010/07/01(木)長野県 天竜川 ~堤防法面浸食を食い止める~

一 級河川天竜川および三峰川の一部の堤防では,キク科の多年草であるオオキンケイギクが優占した植生が形成されています。一般に堤防法面には築堤時に張芝に よる施工が行われますが,オオキンケイギクが侵入しロゼット状の葉を展開すると,その下になった芝は枯死してしまいます。さらに,除草管理による刈り取り が行われると,株状になって生えていたオオキンケイギクの葉の下には多数の裸地が生じてしまいます。

天竜川水系ではこれらの裸地に起因した堤防法面の浸食が問題となっています。一方で,一部の堤防法面ではイネ科の多年生草本であるチガヤの優占する植生が 認められており,こうした植生にはオオキンケイギクはほとんど生育していないことが観察されました。そこで私たちは浸食の発生しない安定した植生を形成す ることを目的に,張芝に替わる植物としてチガヤを導入しました。


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堤防法面のオオキンケイギク
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チガヤマット設置前の堤防法面の様子.

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2010/06/01(火)長野県 天竜川 ~チガヤマット設置によるオオキンケイギクの防除の試み~

[2011/5/21]
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施工後1年が経過したチガヤ群落の様子.
 
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施工後2年が経過したチガヤ群落の様子.
穂が風になびいている.
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法肩の歩道との境目に生育する
オオキンケイギク.
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侵入雑草のナヨクサフジ.
 
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昨年に比べて生育範囲を広げているように
見えるイタドリ.


天竜川にチガヤマットを施工してはや一年。その後の状況を観察しました。かつてはこの時期オオキンケイギクだらけ堤防であったこの場所も、すっかりチガヤ群落になっています。一年早く施工した場所は出穂しており、穂が風になびく姿がきれいです。

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2010/02/08(月)滋賀県 琵琶湖(木浜内湖)環境整備事業 ~既存コンクリート護岸部におけるヨシ群落の創出~

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「自然と人との共生」を掲げて全国で初めて生態系の保全を積極的に定めた条例、「ヨシ群落保全条例(※滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例)」を施 行した事で知られる滋賀県。同県守山市に位置する木浜内湖(このはまないこ)は琵琶湖周辺に残る23内湖の内の一つで、1900年代半ばから急速に進んだ 干拓事業により水際のほとんどはコンクリート護岸となっています。このコンクリート護岸部に再び昔の豊かな水辺生態系を取り戻すべく、平成20年から「木 浜内湖環境整備事業」としてヨシを始めとした水際の植生回復プロジェクトが進行しています。

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2009/04/21(火)兵庫県 加古川市兎ヶ池ため池改修工事事業 ~地元住民による地域性種苗(チガヤ)の植栽と堤体緑化~

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兵庫県の東播磨地域では水辺を活かした新しいふるさとづくり「いなみのため池ミュージアム」が展開されています。行政と地域住民の参画と協働のもと、貴重な水辺空間をより素晴らしい姿で次代へ引き継いでいく事を目的に様々な活動に取り組んでおり、その活動の一環として加古川市志方町西牧にある兔ヶ池の改修 工事と併せた、堤体法面へのチガヤ苗の植栽会が平成21年3月22日に開催されました。

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2009/04/17(金)岐阜県 木曽三川公園長良川高水敷河岸整備工事 ~グリットシーバー~

グリットシーバーは ジオテキスタイルに野芝の根が絡んだ植生護岸材です。一般に、洪水時に水が堤防へ上がってくる場合、通常の張り芝工では出水時に流水の力によりめくれてし まいます。治水を考慮したジオテキスタイル工やブロックマット工は、流速に耐えられても、植生が回復するまで時間がかかります。しかし芝と一体化したグ リットシーバーは、流速4m/sまで対応することが可能なので、緑化をしながらブロックマットと同様に流速の出る川表側の堤防にも使用することができます。裏面に不織布がついているため、堤防土壌の吸い出しも抑制されます。


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グリットシーバー
平成21年5月23日撮影.
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施工前の状況
平成21年4月17日撮影.
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設置直後の状況
平成21年5月28日撮影.


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生育状況(施工後3ヶ月)
平成21年9月2日撮影.
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生育状況(施工後8ヶ月)
平成22年1月16日撮影.


木曽三川公園長良川高水敷河岸整備工事ではグリットシーバーを採用して頂きました。一見張り芝工に見えますが、芝がまだ根付いていない施工直後でも護岸として成立しています。現在でも良好に芝が生育しています。


[2009年4月17日]