奈良県十津川シカ対策緑化工における事例

~チカラシバ、ススキ、カゼクサ~


施工からおよそ1年後の状況 施工からおよそ1年後の状況。全体的に肥料不足の状況を呈しているが、シカの食害を受ける環境においてもシカ不嗜好性植物を用いれば緑化ができることが確認された。


  2019年7月にチカラシバ、カゼクサおよびススキを使った試験施工を行いました。種子はチカラシバとカゼクサ、苗(萱株苗)はススキとチカラシバとしました。試験区は播種区、播種+苗植栽区、苗植栽区および対照区の4つとし、ヤシネット(ベストマンネット)を設置して、その上から播種および苗の植栽、緩効性肥料を施肥しました。およそ1年後の2020年6月時点では播種区と播種+苗植栽区で植物の良好な生育が認められました。対照区は1年が経過してもほぼ無植生であることから、緑化の効果を確認することができました。苗植栽区では植物は生育しているものの、密度が低い状況でした。現場は肥料分がほとんどない状況であったため植物は全体的に肥料不足の状況を呈していましたが、こうした状況においてもススキは良好に成長していることが確認されました。ススキは貧栄養立地でも良好に生育できることから、貧栄養な切土法面では重要な緑化植物といえます。エスペックミックではススキの苗を萱株苗として供給しています。

4つの試験区。 試験施工では4つの試験区を設置しました。

 試験施工では、浸食を防止を目的に、まずヤシ繊維のネット(ベストマンネット)を全面に設置しました。その後、植物種、種子および苗の有効性を確認するために、種子のみを播種した「播種区」、種子と苗を併用した「播種+苗植栽区」、苗のみを植栽した「苗植栽区」および何も植栽しなかった「対照区」の4つの試験区を設置しました。

チカラシバとススキの萱株苗 チカラシバとススキの萱株苗
 シカ不嗜好性植物として、チカラシバとススキの苗(萱株苗)を植栽しました。これらの苗はφ2㎝程度の小さな苗であるため、通常のポット苗と比較して植栽が容易であり、種子から生産ているため地上部と地下部とのバランスがとれているため、良好に活着します。



試験施工からおよそ1年後の状況


施工からおよそ1年後の状況 施工からおよそ1年後の状況。2020年6月。

 試験施工からおよそ1年後の2020年6月に状況を確認しました。肥料分が乏しい立地であったため、植物の草丈は低い状況でした。それでも、「播種区」と「播種+苗植栽区」とでは良好な生育が認められ、植物の被度は80%以上でした。一方、「苗植栽区」では、法尻付近で植物が残っているものの、植生が乏しい状況でした。現場を観察してみると、植栽した苗が引き抜かれてしまっていることが確認されました。通常、苗は種子よりも大型であるため、速やかな生育が期待され、広島県の治山事業における事例では、苗は良好な生育が確認されています。苗の植栽による緑化は現場の状況に左右されることが分かりました。

引き抜かれて枯れた苗 引き抜かれて枯れた苗。

高さ50㎝以上に成長したススキ 高さ50㎝以上に成長したススキ。

 その一方で、苗で植栽したススキは高さ50cm以上に成長している状況も確認することができた。ススキは貧栄養立地でも良好に生育できることから、貧栄養な切土法面では重要な緑化植物といえます。しかし、ススキは種子を播種しても発芽しないことも多いため、種子による緑化からは安定した成果が期待できません。そのため、苗の植栽は効果的な手段と言えます。