2007/09/07(金)大阪府 松尾川上流ワンド整備事業 ~ワンドのビオトープ機能とその再生~

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大阪府和泉地方を流れる松尾川の上流域において 河川公園整備と併せて河川生態系保全・再生のためのワンド整備が実施されました。 「湾処」と書いてワンド・・・昨今ではこのワンドを備える河川というのはほとんど見られなくなってきましたが、ワンドは稚魚や鳥類の生活の場として、また 水辺の生き物にとっての出水時における避難場所として機能する河川生態系にとって非常に重要な舞台となります。ツ黴€ 人工的にワンドを新しく整備するというのは決して容易な事ではありません。せっかく整備しても生き物が集まってこない、出水によりワンドそのものが崩壊し てしまう、土砂堆積によりワンドが完全に埋まってしまう事も数多く報告されています。また植生という側面にも湿地状態がうまく保てなかった結果、ワンド周 囲が外来の陸生種(セイタカアワダチソウ・セイバンモロコシ等)に覆い尽くされてしまったり、逆に裸地(無植生)の状態が継続的に続いてしまったりという 問題が生じる事があります。ワンドでの豊かで安定した我が国本来の水辺生態系構築のためには、施工時段階における水辺の植生整備はやはり必要となるケース が多いのではないでしょうか。

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2006/03/17(金)岐阜県 長良川 ~伝統工法“聖牛”へのロックロールの使用~

岐阜県長良川で、河川の中に棒状の資材が組み合わさったオブジェのようなものを見ることができます。このオブジェ、実は『聖牛(せいぎゅう)』という河川を 守る伝統工法の一つ。木材を組み、重しの役割をする「蛇カゴ(網の中に石を入れたもの)」をその上にのせただけのシンプルな構造をしています。

この聖牛は、減勢効果や導流効果が期待される透過性の水制工であるため、急流河川の水衝部などに配置されています。
今回、長良川の聖牛において、重しの役割をする蛇カゴ部分にべステック・ロックロールが使用されました。


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遠景からはオブジェのように見える
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長良川の聖牛
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(参考)聖牛の構造イメージ図


従来使用されている蛇カゴは鉄製のものを使用しているため、出水時などに大きな衝撃が加わると破断してしまう恐れがあります。しかし、今回使用することになったべステック・ロックロールは、 無結節網となっているため、万が一ネットの一部に破断が起きてもこれを起点に次々にほつれてしまう心配はありません。また、中詰の石を充填した状態で運搬 ができることが、大きな利点でしょう。今回は、長良川河川敷で現地の玉石を充填し、利用しました。網自体がフレキシブルであるため複雑な形状の設置場所に も対応できます。


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聖牛は構造上、隙間が多いので時間の経過と共に、様々な動植物の住処になりうるものです。設置後、ベステック・ロックロールには、周囲の玉石と同様に水中に沈んでいるネット自体にも藻類が付着し始めています。

少しずつ堆積される土砂や周囲のコンクリートブロックとともに、水中の生物にとっても有効な空間となって欲しいものです。

[松岡義宏]

[2006年3月17日]

2003/07/31(木)大阪府 豊能町水路 ~水路の自然再生の試み~

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豊能町水路施工後4ヶ月後の状況
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一般的な水路の改修事例


水路の改修というと一般的にはU字型一直線の灰色の光景(左写真)が目に浮かんでしまいますが,豊能町の水路では水路としての機能を維持させながらも,できるだけ自然に近いものにすることが検討されてきました.
そうした中,この水路では護岸には多孔質ブロック,護床にはロックロール(STW200;ネットジャカゴ)及びルートボール(BC06 ヤシ繊維基盤ポット苗(φ6cm),植物種:セキショウ)が導入されました.ちなみに当該水路は修景施設ではありません.下の4枚の写真が施工時の流れです.

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